理工学部の地位向上 - 理工学部の凋落傾向  

 理工学部の凋落傾向が著しくなっています。理工学部の不人気により、志望者が集まらず、偏差値も低下しています。日本の将来を考えれば、理工学部の地位向上は急務です。本ページでは、日本の未来と理学部、工学部の地位向上のためにできることは何かを考えます。 

I.理工学部の地位向上は、日本の死命を制する大問題である

1.理工学部に優秀な人材が集まらなくなることは、日本の競争力を決定的に押し下げる

 理工学部の不人気、志望者減少は、著しくなっています。今や、理工系学部に志望者が集まらず、定員割れが生じています。事態は一刻を争うのです。

 医学部は高い人気を保っています。医学は大事です。しかし、日本は外貨を医学だけで稼ぐことは困難です。また、医学の進歩には、治療機器、検査機器、新素材、遺伝子工学など、電気、物理、化学、生物、情報など、幅広い基礎科学の発展が不可欠です。医学だけに優秀な人材が偏在するのではなく、全産業に優秀な人材が行き渡ることが重要なのです。理学部、工学部、農学部、薬学部、医学部、歯学部など、広い学部に、それぞれ適性のある人材が行くようになることが望ましいのです。

 理工学部の凋落により、理工学部に人材が集まらなくなることは、日本の足腰・基礎体力を極端に弱らせることになります。理工学部の地位低下と志望者減少は、日本の製造業に、深刻な悪影響をもたらし、日本の物作りにも悪影響を与えます。

 理工学部の不人気により、技術者・研究者に人が集まらなくなり、科学技術立国の基礎が揺らぐことになるのです。

2.理工学部の不人気の理由

 理工学部の不人気の理由は、理工学部の卒業生の地位や待遇が低いからです。医学部がなぜ人気なのかと比べればすぐに分かるでしょう。理工学部離れはあっても、医学部離れはありえません。子供達は、先を争って医者になろうとするでしょう。

 理工学部の凋落の原因は、理工学部を卒業しても、社会では報われないことが、情報化社会の進展に伴い、子供達にも良く知られるようになったことにあります。この点については、理科系離れ、理工系離れ、理系離れが深刻な問題になっていることからも分かります。

3.理工学部の連帯による、理工学部の凋落防止と優秀な人材の獲得

 理工学部の地位向上、人気上昇のためには、理工学部の強い決意と、連帯が必要です。全国の理工学部が連帯をするという発想が、今までなかったのです。本ホームページは、日本で初めて大学の垣根を越えた「理工学部の横断的連帯」による理工学部の地位向上を目指すページです。

 理工学部の凋落傾向を止めることは、巨大な流れであり、一大学の力では到底成し遂げられません。全大学の理工学部、理工系専門学校等が、横断的に大団結、大連帯をして、初めて解決できることなのです。

 以下、具体的な手段を考えていきます。


II.理工学部の凋落を食い止める手段1 奨学金の充実

 理工学部を卒業するには多くのお金がかかります。文科系の場合、学部を卒業して就職するのが普通のため、すぐに収入が得られます。理工系学部の場合、大学院に進むことが多く、収入がなかなか得られません。

 難しい勉強をし、実験等で忙しく作業をし、大学院で多くのお金を使って専門的なことを勉強します。専門分化が激しいので、習得に時間がかかるのです。そうしている間にも、文系学部の卒業生は、社会で働いて収入を得ることができるのです。

 文理格差により、理工系と文科系では、生涯年収の差がかなりあります。理工学部の出身者は、専門分化が著しいため、研究所所長や工場長よりも出世することが難しく、人生の後半で大きな収入差がつくからです。上場企業の役員構成、官僚の構成を見れば、理工系より文科系が出世していることは明らかです。個々の人を見れば例外はありますが、全体としてみると、入社した社員に比べたときの役員になった者の率では、歴然とした差があります。

 このように、理工学部では、専門分化が激しいため、長い時間の勉強が必要です。そして、専門分化が激しいことは人生後半における待遇の改善にはむしろマイナスです。人生後半においてリストラにあう可能性もどんどん高くなっているのです。若い頃、少しくらい就職がよくとも、医学部のように高い収入と地位が約束されているわけではなく、歳をとれば、能力が衰え、専門技術にも携われなくなり、つまらない仕事をしながら、いつリストラにあうかに、毎日おびえながら暮らすことを子供達はイメージするのでしょう。

 そのような勉強に、多額のお金を、何年間もの間、自費でつぎこまなければならないのです。

 このことから、理工学部においては、奨学金の充実が急務であることが分かるでしょう。理工学部は、団結をして奨学金を政府や産業界から集める組織を作るべきです。

 理工学部の志望者が少なくなったり、質が低下すれば、日本はだめになるし、製造業をはじめとする日本の産業界も深刻な悪影響をこうむるのです。


III.理工学部の凋落を食い止める手段2 卒業生の徹底支援

 今まで、大学は、卒業生の就職の世話をしてきました。しかし、理工学部、理工系専門学校の卒業生の地位が低いのは、就職が悪いからではありません。就職した後、自由に研究開発ができず、会社の中で不遇になることが問題なのです。

 会社の中では、自由に研究開発をしようとしても、会社の利益にならなければ周囲の圧力が強いものです。楽しいはずの研究活動が、上司への不満の毎日となってしまうのです。このような愚痴を親が言えば、子供は「絶対に理工学部に進学してはならない。夢も希望もない。」と強く思うでしょう。そのような子供が、理工学部を受験するでしょうか。

 理工学部は、卒業生に研究リソースを開放するとか、共同研究をして学会発表の場を与えるなどして、卒業生を徹底支援する必要があるでしょう。卒業生が社会に出てからも、理工学部の支援を受けられるようにする窓口を作るべきでしょう。そして、場合によっては、大学職員への途を広く開放していく必要があるでしょう。そうでなくても、会社の中で自由に研究ができない卒業生に、ある程度の支援を与えることができるでしょう。

 理工学部の卒業生支援の窓口が、大学横断的に協力して、理工系の卒業生の研究開発をサポートする必要があります。そして、卒業生が学会等で活躍できるように、理工学部が支援をしていくことが重要なのです。

 また、新しい技術について、民間との協力をする際に、卒業生を支援することが重要です。卒業生が、産学共同のプロジェクトのリーダーとして、十分に力を発揮し、会社内部での卒業生の立場が良くなるように、理工学部、理工系専門学校が強力にサポートをしていくことが重要でしょう。



IV.理工学部の凋落を食い止める手段3 医学部を専門大学院にすること

 現在、理工学部の偏差値低下は著しく、優秀な高校生が理工学部に行くのは「もったいない」として医学部に行くようになっています。本当は適性が理工学部にある者まで、社会的な不遇をおそれて医学部に行くのでは、そちらの方が国にとっては「もったいない」のです。しかし、個人の幸せを考えれば、そのような選択がやむを得ない社会になってしまっているでしょう。これは、非常に不幸なことです。

 医学部には、医学に適性のある人が行くべきでしょう。人材の偏在を防ぐには、人生の早い段階で専攻、職業を決めてしまうことを防ぐ必要があるでしょう。医学部を専門大学院にすれば、優秀な学生が理工学部に入ってきます。そして、医師への適性を大学で見極めて、本当に医師になりたい者だけが医師になるようにすることができるのです。
 
 アメリカでは、医学部は専門大学院になっており、優秀な学生が理工学部に進みます。医学部と理工学部のいずれに進むかを高校生の段階で悩む必要はないのです。


V.理工学部の地位を向上させる手段4 理工系の地位向上を目指す

 理工系の人々の地位が向上すれば、理工学部の地位も向上します。仮に、理工学部の出身者が、医師と同じ待遇を得られるとしましょう。それでも、理工学部離れは起こるでしょうか。

 起こるわけがありません。優秀な人材は、先を争って死にもの狂いで理工学部に入ろうとするでしょう。理工学部の不人気とか、理工学部の凋落とか、理工学部の低迷などの言葉は、死語になるのです。理工学部の地位も上がります。理工学部を出たということがステイタスになるのです。

 理工系の人々の地位向上について、大学、専門学校ができることはたくさんあります。その一つは、理工系の地位に関して、理工学部、理工系専門学校が積極的に意見を発表することです。

 政府が意見を募集している場合があります。このような場合にも、大学の理工系学部は、一致団結してパブリックコメントを提出すべきでしょう。理工系の地位向上に役立つパブリックコメントがいくつもあります。

 大学の理工学部、理工系専門学校が、社会的な力として団結をして、大学横断的にまとまっていくことが、科学技術立国を目指す日本の未来を切り拓くのです。今まで、理工学部は、そういう活動に携わってきませんでした。これからは、理工学部の凋落傾向を食い止める努力が必要になるでしょう。

 理工系の地位向上については、理工系.comが理工系支援のポータルサイトとなっています。




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